建設業DXのホントのこと

桐生匠真 / HARMONIC insight

現場デバイス図鑑

「中国は安い」では、ありません。

日本の展示会には出てこないものが、たくさんあります。ただ、カテゴリごとに、日本との差の性質がまるで違います。桁が違うもの、代理店価格で2〜3倍のもの、差がないもの、そもそも完成品がないもの、 国産のほうが強いもの、現場に入らないもの。

この仕分けを先に持っておくと、「全部やる」か「何もやらない」の二択を避けられます。 並べているのはデバイス名ではなく、現場から取れるデータです。

この図鑑の立場

  • 購入リンクは張っていません。 型番だけを載せています。紹介料を受け取らないので、勧める理由も、勧めない理由も、書いてあるとおりです。
  • 価格は2026年8月に調べた表示価格です。 販売サイトのセール表示は頻繁に変わります。金額そのものではなく、桁を見る材料として扱ってください。
  • 技適は確認していません。 確認していないものを「未確認」と書いてあります。ここに載っていることは、 HARMONIC insight が推奨したという意味ではありません。
  • 日本の相場は、編集時点の推定です。 裏取りはこれから進めます。推定と書いてある数字を、そのまま資料に使わないでください。

6つの分類

価格は変わりますが、この分類は変わりません。図鑑の芯はこちらです。

差の性質カテゴリ現場での言い方
桁が違う4Gソーラーカメラ/AIレコーダー/サーモカメラ/GPSトラッカー/AIグラス同じことが、1桁安くできます
2〜3倍差ハンドヘルドSLAMスキャナ差額が何の対価かを確かめましょう
差がないガス検知器(本体価格)ここは国内で買ってください
完成品がないUWB(屋内測位)まだ自分で組む世界です。今期は見送りが妥当です
国産が強い外骨格(腰・背中の補助)ここは国産で構いません
現場に入らない四足歩行ロボット実証実験の話であって、導入の話ではありません

取れるデータで並べる

デバイスは、データを吸い上げる口にすぎません。先に決めるのは、買うものではなく、どのデータを、どの型で揃えるかです。

映像(定点)桁が違う電波を出す / 技適 未確認

4Gソーラーカメラ

効く場面:進捗の定点記録/夜間の資材置場/遠隔の出来形確認

電源も回線も要らない現場カメラが、5千円台から並んでいます。太陽光パネルと4G回線が本体に付いていて、置くだけで映ります。この図鑑の中で、いちばん差が大きいカテゴリです。最初に検討するならここからだと考えています。

国内の相場:建設用ネットワークカメラはレンタル月1〜3万円、購入で10万円超が一般的(推定)

品目(2026年8月時点)表示価格
4Gソーラーカメラ 3レンズ3画面5,709円
V380 Pro 4K デュアルレンズ 4G7,417円
8MP 4K 屋外デュアルレンズ 4G7,509円
SECTEC AOV 6MP PIR 4Gソーラー17,624円
50倍光学ズーム ソーラー4G21,404円
LS VISION 10MP デュアルスクリーン27,032円
点群2〜3倍差電波を機種による / 技適 未確認

ハンドヘルドSLAMスキャナ

効く場面:現況測量/出来形の確認/BIMとの差分

実用クラスが60万円台からあります。差は2〜3倍で、映像ほど極端ではありません。差額が何の対価なのかを切り分けるべきところです。校正証明・保守・日本語サポート・点群処理ソフトのライセンス。測量成果として使うなら、差額に理由がある場合があります。出来形の目安として使うだけなら、話は変わります。

国内の相場:同クラスの国内代理店経由で300〜600万円(推定)

品目(2026年8月時点)表示価格
Yahboom PALMSLAM(LiDAR別売の筐体のみ)12,902円
ハンドヘルド固定式 SLAM 3D LiDAR15,508円
GEOSUN GS-200G(Livox Mid-360)609,573円
SHARE3DCAM SLAM S20905,521円
XGRIDS Lixel K11,599,046円
音声桁が違う電波を出す / 技適 未確認

AIレコーダー(文字起こし・要約つき)

効く場面:打合せの記録/口頭の指示/現場の音声メモ

5千円前後で、録音から文字起こし・要約まで謳う製品が並んでいます。価格差は3〜5倍です。

国内の相場:国内のAI議事録デバイスは3〜5万円(推定)

注意:この価格帯は、文字起こしをクラウドへ送る前提のものがほとんどで、送り先が明記されていません。打合せの音声には施主・協力会社の発言が含まれます。業務でそのまま使える製品は、この中にはありません。

品目(2026年8月時点)表示価格
AIボイスレコーダー アプリ制御4,867円
AI Recording Pen 翻訳・要約5,345円
AI搭載 音声録音機+通話録音5,501円
AI ChatGPT-4 ボイスレコーダー6,578円
AI recording smart card(カード型)8,090円
ChatGPT-5 AIボイスレコーダー10,941円
温度桁が違う電波を出さない

スマホ装着サーモカメラ

効く場面:断熱の欠損/漏水/分電盤の発熱/熱中症の兆候

256×192クラスが1〜2万円です。スマホに挿すだけなので、所長全員に配れる価格帯に入っています。USB接続で電波を出さないため、技適の問題が起きにくいカテゴリでもあります。

国内の相場:同等品は国内で3〜6万円(推定)

品目(2026年8月時点)表示価格
TIOP01 赤外線サーモ9,001円
携帯電話用サーマルイメージャー10,377円
Type-C モバイルサーマル12,880円
TOOLTOP T7(256×192・25Hz)19,969円
NOHAWK USB-C(iOS/Android)20,702円
Thermal Master P3(512×384)49,955円
位置・稼働桁が違う電波を出す / 技適 未確認

4G GPSトラッカー

効く場面:リース建機・小型重機・仮設機材の所在と実稼働

買い切りで2千円台から。国内の建機テレマティクスはメーカー純正の月額課金が基本で、買い切りで後付けするという発想自体がほとんどありません。「どこにあるか分からない」「実稼働が分からない」は、どの現場でも出る話です。

国内の相場:国内は月額課金型が中心で、買い切りの比較対象が乏しい

注意:通信のSIMを別に用意する必要があります。本体価格だけでは運用できません。

品目(2026年8月時点)表示価格
GPSトラッカー(2026年モデル)2,036円
DAGPS 4G GT06(エンジン連動)2,841円
SinoTrack マグネット式4G(防水)3,470円
4G車両GPSトラッカー4,100円
Jimi VL802 4G9,847円
屋内測位完成品がない電波を出す / 技適 未確認

UWB(超広帯域)

効く場面:屋内の人・資材の位置/立入禁止区域の検知

検索して出てくるのは、ほぼ全部が開発用のモジュールと基板です。現場にそのまま持ち込める完成品がありません。屋内測位は、中国でもまだ自分で組む世界だということです。これは日本が遅れているという話ではありません。今期は見送り、と判断してよいカテゴリだと考えています。

品目(2026年8月時点)表示価格
IPSアンカーポジショニングシステム2,984円
UWBモジュール 測距・方位・高度角8,181円
UWB650 UARTインターフェース18,158円
スマート産業用IoT測位システム21,290円
ESP32-S3 UWBモジュール DW300026,054円
安全(ガス)差がない電波を出さない

4ガス検知器(O2/H2S/CO/LEL)

効く場面:酸欠・硫化水素のおそれがある作業

8千円台から並んでいて、国内の検定品との価格差は10倍ほどに見えます。ただし、この差は品質の差である前に、要求を満たしているかどうかの差です。「同じ4ガス検知器で10倍差がある。差は何か」を説明できると、他のカテゴリの価格差の見方も同時に伝わります。この図鑑にこのカテゴリを載せているのは、そのためです。

国内の相場:国内の検定品は5〜15万円(推定)

注意:安いという理由で選んではいけないカテゴリです。人が死ぬ場面で使う道具で、法令上の要求を満たしているかは販売ページから判定できません。国内で検定を受けた製品を選んでください。

品目(2026年8月時点)表示価格
デジタル4in1 ガス検知器8,649円
4in1 ガス検知器16,996円
DR950 ポータブル4in118,106円
鉱業用ポータブル拡散型4in133,727円
身体補助国産が強い電波を出さない

外骨格(腰・背中の補助)

効く場面:重量物の取り回し/頭上作業/中腰の姿勢

10万円台からありますが、国内の腰補助スーツも10〜50万円なので、差は小さいカテゴリです。身体に装着するもので、サイズ・保守・労災時の説明責任がついて回ります。国産を選んで構わない領域だと考えています。中国製が常に有利なわけではない、という例としてここに置いています。

国内の相場:国内の腰補助スーツも10〜50万円(推定)

品目(2026年8月時点)表示価格
人間工学 背中サポート100,040円
倉庫作業員用 産業用弾性ウエスト124,948円
人間工学 産業用金属製背中サポート568,654円
高強度産業用素材 腰サポート1,165,905円
パッシブリフティングアシスト3,229,785円
巡回現場に入らない電波を出す / 技適 未確認

四足歩行ロボット

効く場面:自動巡回/夜間監視/危険区域の点検

産業用が41万円台からあります。米国製の同種が1,000万円を超えることを思えば、20倍以上の差です。ただし、現場に入るかどうかは別の話です。足場、段差、粉じん、雨。実証実験の絵にはなりますが、導入の話にはまだなりません。止めるなら金額ではなく、現場条件で止めるべきです。

品目(2026年8月時点)表示価格
PuppyPi 金属製四足ロボット(ROS)128,623円
Simplayer Hiwonder ROSPug223,732円
車輪式四足歩行ロボット E1-W(産業用)416,441円
カスタマイズ産業用四足歩行ロボット23,900,085円
映像(一人称)桁が違う電波を出す / 技適 未確認

AIグラス

効く場面:遠隔支援/一人称の記録/図面の確認

撮影に特化したものが7千円台から、ディスプレイと翻訳を持つものが9万円台まで、幅の広いカテゴリです。相場観をつかむための参考として載せています。現場で使うには、ヘルメットとの併用と防じん・防滴が別の課題になります。

品目(2026年8月時点)表示価格
2026年新型 4K 8MP スマートグラス7,540円
800万画素カメラ搭載スマートグラス8,045円
Blackview BV200 AIスマートグラス8,144円
INMO GO3 AI翻訳スマートグラス93,720円

日本で使うときの、4つの関門

安いデバイスを並べるだけなら、誰にでもできます。実際に現場へ入れるかどうかは、ここで決まります。

電波を出すか(技適)

4Gカメラ、GPSトラッカー、AIグラス、AIレコーダー、UWB。この図鑑の半分以上が電波を出します。技適を受けていない機器を国内で使うと、使った側が電波法に触れます。販売ページからは判定できないため、この図鑑では技適の欄をすべて「未確認」としています。

法令上の要求があるか

ガス検知器が代表です。安全に関わる計測機器は、価格差の理由が要求水準の差にあります。安く買えることと、その現場で使えることは別の話です。

充電器とバッテリー(PSE)

現場に置く以上、火災のリスクを負うのは発注した側です。付属の充電器の表示を確認してください。

発注者側の調達制約

官公庁・大手・インフラ系の案件では、中国製デバイスが実質的に通らないことがあります。技術的に良いかどうかとは別の話なので、検討の前に確認すべきところです。

更新について

価格は2026年8月の調査で固定しています。日々の変動は追いません。見直しは四半期に一度です。 機種を増やすことよりも、カテゴリごとの見方を厚くしていきます。 そちらは、価格が変わっても古びないからです。

技適の確認状況は、分かったものから埋めていきます。「未確認」が残っていること自体を、隠さずに出しておきます。